彼方より

日記や書評など駄文を綴ります、悪しからず。夢野久作と杉山三代研究会の末席を汚す者。https://twitter.com/pallentium

迷子

日は暮れかかっていた。初めて遊びに行った友人の家から帰る途中、私は道に迷った。友人の家に引き返そうにも、その友人の家に行く道すらも思い出せず私は途方に暮れた。見渡せば四方は田畑ばかりで、夕焼けがその田畑を真っ赤に焼いていた。風に乗って、ど…

秘密基地のブランコ

祖母の家の近くの林に備えられた誰が作ったかもわからない、小さな小さなブランコ。僕らはそこを秘密基地と呼んで、祖母の家に行くたびに遊んだ。かえってブランコに乗ることは少なかった。けれど木々の葉を通した光が緑色に輝いて、その淡い緑に包まれて小…

このブログを開始してからもう随分と時間が過ぎたように思われます。季節は春を越えて、夏を巡り、秋へ。記事の数も気づけば130本以上になっていました。一時期、ものすごく読者数が伸びて多くの方に読んでいただいた当ブログも最近では閲覧数も減ったようで…

生まれ変わったら鳥になりたい。美しい翼を持つ鳥。ハシビロコウになりたい。間抜けな面だと笑われるハシビロコウだがその翼は他のいかなる鳥よりも美しい。その翼の美しさを見たら世界が翳るほどには美しい。その巨大な翼を持ってしてもハシビロコウはよた…

らべんだーのかほり

刻一刻と時間が進んでいくことに対する焦り、それに対する記事を書こうと思っていたのだが気乗りしないので、何か違うことについて書きたい。とここまで無心でキーボードを打鍵したが、この段階に至っても書くことが思い浮かばず。ああ、何を書こう。 今日は…

真っ赤な風船

高校2年の時に書いた小説めいた謎のものです。 ある広い青空の下の公園で風船が飛んでいました。大きな大きな風船です。赤い赤い風船です。持ち手の大きな、風船です。それは白い雲と、青い空に、よく映えていました。 女の子がいました。一人で泣いていまし…

夢野久作は夢を見ていたか?

私にはそうは思えない。彼の作品は一見して夢を描いたようなものに見えるけれど良く見つめれば現実が濃縮されたものだとわかる。夢見がちな作風と一蹴するのはどうだろうか。強度な現実感に裏打ちされた幻想的な作風。それこそが久作の作風だ。

夕焼けの花

墓石から花が咲いた 花からは線香の匂いが香っていた その花を摘んで墓参りに来ていた可愛らしい男の子の頭に挿した 男の子はどんどん老けて死んだ 死んで石になった 驚いてその子(もうその子は子ではない)に触れると首が落ちた ぼろりと ごとん と音を立…

スイッチ

頭の中に明確にスイッチが存在している。論文を書くときは論文のスイッチ、エッセイを書くときはエッセイのスイッチ、小説を書くときは小説のスイッチ、というように。そのスイッチが切り替わるまだなかなか筆は進まない。だが一度ぱちっ、とスイッチがオン…

僕らの夢

僕ら幼馴染四人はいつも一緒だった。学校で遊ぶときも、帰るときも、本当にいつも一緒だった。 帰り道僕らは良く空地の廃屋の話をした。僕らの地域の中心点ともいえる場所には空地があった。そこには廃屋があって、さびたトタン屋根とか、腐りかけの木材、ど…

『人間失格』に関する思い出——太宰治の逆説的な強さ

恥の多い生涯を送ってきました。 『人間失格』を読んだのは高校一年生の春だったと記憶している。昔から読書は好きだったが、それまで読んでいたのは星新一や、東野圭吾や赤川次郎、さらに幼いころに遡ればマジックツリーハウスシリーズなどで、世にいう「純…

父との思い出。

山々の深緑、アスファルトの黒ずんだ灰色、交通標識の赤や青、黄色といった色彩は流れていく景色の中で渦を巻くように混ざりマーブル模様をなした。父の背中だけがそのマーブルの氾濫の中で静かに佇んでいた。峠のカーブに差し掛かり、父がゆっくりと体を傾…

自分の好きなところ

家族とあまり顔が似ていないところ。鼻にわずかに母の面影を感じるが、それだけだ。方言も使わない。そもそも、東北にいながらにして方言に馴染まなかったのが幸いだろう。 ふとした時、自分の身振る舞いの中に、家族の影を感じる。 その時私は戦慄する。

猫の舌

――炎のようだと思った。その炎はいまでも僕の体の中をざらざらと駆け回る。 僕は猫の舌の触感を知っている。その全てを知っている。猫を飼ってもいないのに。触ったことも無いのに。 例えば、猫が欠伸をした拍子に指を差し入れてその舌に触れた時の感覚。例…

嫌いな食べ物

トマト、ゴーヤ、はたはた。 昔僕の友人が給食の時間トマトをぐちゃぐちゃにいじりながら解剖ごっこと言っていたせいだろうか。トマトは苦手だ。小動物を仮に嚙み潰したらこんな感触なのだろうか。口の中で爆ぜるその感触、滑らかな舌触り。柘榴は人肉の味と…

お知らせ

今日から気まぐれに短編というか詩を乗っけることにしました。時々のっけます。たまに記事が二件投稿されている時があるので確認してみてくださいね。 今日は夜を轢き逃げというものを乗っけてます。

良い神様と悪い神様。

グノーシス主義という宗教および思想では神がそのように二分される。人間がその姿を真似した良い神様と、人間に対して悪いことばかりする悪い神様。良い神様は無能者で、何もすることができないのに対して悪い神様はなんでもできる。 これは案外当たり前なこ…

夜を轢き逃げ

あんまりにも体が火照るので北へ、ひたすら北へ。バイクは唸りを上げて景色を置き去りにしていく。 十字路の青い信号がぱっと切り替わって信号が点滅した。黄色く点滅した。 あんまりにも体が火照るので僕は止まることができなかった。 そのとき、ちょうど空…

悲劇の優しさ

悲劇ほど優しい物語が他にあるだろうか。いいや、きっとないだろう。この世の中の誰よりも不幸で悲しい物語が仮に存在したのならば、その一つの悲劇の存在だけで、誰かの悲劇を和らげることが出来る。しばしば悲劇は美しさとともに語られるがその優しさが悲…

涙はなんのために流れるのだろう。 子供の頃から泣くのが嫌いでそれは今でも変わらない。涙は弱さの結晶に思えてしまうからだ。どうしようもない問題に囲まれて詰みに陥ってしまった時、鼻の奥が鋭く痛み涙が出そうになるが僅かに目を見開き何も考えないよう…

お詫び

二日間ほぼ不眠で外出したら飲み歩いていたため日記を書く時間がなく更新することができませんでした。今日からまた更新するので今後ともよろしくお願いします。

引きずる足の重さ

この人生失敗だらけだけど段々と前に進めている気がする。まだ道の途中だからそんなことを言うのは傲慢かもしれないけれど。最悪の環境が少しずつ変わってきた気がする。豪雨による濁流が時を経るに連れて清澄な流れに変わるように。足を引きずりながら生き…

匂い、逃亡者

退屈に任せて外に出るとふと何かが香る。どこかで嗅いだことのある匂いだが、いつどこで嗅いだのか全く思い出せない。あてもなく散歩しているとこの香りが幼い頃よく嗅いでいた匂いだとわかる。ああ、懐かしい。そんなことを思いながら歩みを進めるがこの香…

焼き肉

今日は焼き肉を食べた。そろそろ帰る私を気遣って父親が連れて行ってくれたのだ。姉も同伴した。前にも話したかもしれないが私は姉がかなり苦手だ。性格から服装まで全てが苦手だ。焼き肉はとても美味しいけれど、きっと父と二人だったらもっと美味しかった…

筋トレ宣言

実家に帰ってきて二週間ほど。そろそろ帰るがどうも腹に肉がついた気がする。顔も少しむくんだ感じが…。私は身長170センチ56キロなのでどちらかといえば痩せている方だが、このまま太っていくのは嫌なので細マッチョ目指して筋トレをすることにした。とりあ…

奇妙な連鎖

ああ、足がかゆい。足の甲の、小指側。いや、くるぶしと小指の中間地点。左足だ。左足が痒くてたまらない。書くしかない。そうして私はその場所、つまり左足の小指と、くるぶしを結んだ中間地点を右手で掻く。その瞬間、何かが体を一寸のうちに通り抜ける感…

就職

私の大学三年生の夏休みも一ヶ月を残し終わりを迎えようとしている。そろそろ働く、ということを真剣に考えなければいけない時期に差し掛かっている。友人とも話したがやはりあまり働きたくない。一年くらいアルバイトで生計を立てらのもいいかもしれないと…

一人称の勧め

柔らかければ、あるいは幼さを残す僕。公的な場では私。何も気遣うような必要がないのならば俺。男というジェンダーですら分化している、と、これらの一人称を見て思わないだろうか。 僕らの性は瞬間、分断されていく。僕らには一人称という時点においてもう…

自分の体が機械だと思う瞬間

眠りに落ちる直前、僕はなんとなく目を動かしてあちこちをみる。壁にかけられた時計、心地よいホワイトノイズになった深夜番組、部屋干しされた洗濯物、カーテン。それらは全てまどろみの中にぼやけてとろけている。 不意に枕を見る。頭を乗せている枕だ。枕…

やる気枯渇問題

やる気が枯渇した。僕の心をいくら掘り進めようがやる気は吹き出してこない。やるべきことはたくさんあるのに。 怠け癖がついてしまった。それとも今がそういう時期なのか。そんなわけで今日も遊び呆けて眠る。悪いことは全て明日の私に任せれば良いのだ。